Bill Evans "The Paris Concert" 未発表曲!

 ヨーロッパの公共放送のラジオチャンネルは結構すばらしいアーカイブがあるのですが、先月フランスで発掘されたのが表題のParisConcertの未発表曲。いや、さすが録音元(そもそもフランス国営放送が録音していたライブをEvansの死後アルバムにしたものなので)。下記ページからmp3ですが全部聞けます。

 

www.francemusique.fr

 

 パート1と2、にページは分かれているのですが、アルバムとは曲順がまったく違います。録音順ですかね・・・

 で、注目はアルバムに入らなかった2曲。それと、手持ちはCDだけなのですが、Edition Twoの最初、Re:Person I Knewに音ゆれがあるのが気になっていました。それもきちんと直されています。フランス国立視聴覚研究所(http://www.ina.fr/)が協力、とありますからアーカイブと修復はここがやってそうですね。公式なので、レコード会社にはアナウンスされているでしょうから、CDに追加&ハイレゾ音源でいずれ出てくると期待しましょう。

海外の国営放送、ラジオ専門チャンネルとかもあります。ここ数年、自宅ではネットラジオをかけっぱなしにして、気に入った曲のアルバムを購入という流れが続いています。特にデンマーク放送協会(https://www.dr.dk/)のP8チャンネルは私の好きな欧州ジャズ、60年代ジャズてんこ盛り。最高です。

 

2018/4/1追記

CDでミックスも異なる2バージョンが出るとのこと。

「続・エバンスを聴け!」で教えていただきました。

パリ・コンサート 1979 アンリリースド・トラックス: 続・エヴァンスを聴け!

Bill Evans "You Must Believe In Spring" の音について

 あまりにも有名なアルバムです。内容については私が書き添えるようなことは蛇足にすぎませんので、各レビューや解説を参考にしてください。

 ただ、個人のレビューは「個人の感想」であり、解説は「レコード会社かどこかの会社からの依頼があって、お金をいただいている」ということを前提にし、自らがそれに釣られるのではなく、常に自分を中心において、批判的に見ることを心がける必要があるとおもいます。できれば、前提無しで自分で聞いて感じたこと、を優先し、自分の感性には優先的に従うこと。世界中の多くのレビューや解説を心の赴くままに読み、その後に聞いて感じたことは理知的に押さえる事。を個人的には心がけています。私の心は私のものであり、他のものでは代えがききません。

 逆に言えば、その姿勢を他人に求めることもしません。聞き方や好みは千差万別、相手の好きなことや、やり方にけちをつけるのは無粋の極みです。ここから先は、私ができるだけ客観的な事情から録音とリマスターを掘り下げてみた内容です。誤りがありましたらご指摘をいただければ幸いです。

 

 さて、ここからが本題。

 まず、US盤のLPと、2003年にボーナストラックが入る前のCD、これは私の好みではありません。録音エンジニアはAl Shumitt、プロデューサーはTommy Li Puma。現在ではダイアナ・クラールで有名な組み合わせ。さらにMasteringは若き日のDoug Sax。考えられる最高の布陣なのですが、EddieGomesのベースがエレキっぽい。Evansのピアノもエレキっぽい。はっきりいって、違和感があります。

 録音は1977年、今から40年以上前。場所はハリウッドのキャピタルスタジオ。このスタジオは改修されながらも現役で、スタジオAはフルオーケストラ対応、スタジオBが小規模レコーディング用。Cは現在マスタリング専用のようです。このスタジオは天井が高く、エコー成分がかなり出るので、ストリングスには自然なエコーがかかるため、クラシックやストリング入りのボーカルもので名録音を数多く出しています。

 探していたら、当の録音エンジニア、Al Shumittのインタビューがありました。2ページ目の後半からこのアルバムの話題になります。

RE/P Files: An Interview With Al Schmitt - ProSoundWeb

 

インタビューの中でも、やっぱりこのアルバムのGomezのベースは

”almost like an electric bass”

といわれちゃってますね。

 

 で、ふと思い出したのですが、Waltz For DebbyのドイツプレスのCDは、やや音が硬め、というWebページがありました。

www.audio-masterfiles.com

 

 このページを拝見するまで、日本版は孫コピーくらいの空輸マスターテープからLPを起こしているので、音の鮮度はマスターテープ&カッティングを原製造国(≒アメリカ)でやっているのが良い結果になるのだろうという漠然とした思い込みがあありました。コピーテープに起因する音の曇りや低いダイナミクスを復元させつつ、日本の機器環境に合わせる音作りを日本のマスタリングエンジニアは手がけてきたのではないかと想像しています。(ここの部分は当時の日本版を手がけた方のお話がぜひ知りたいところ)

 ここで今一度立ち返って考えてみると、日本以外の国も事情は同じ。各国で各国の実情に合わせたマスタリング&カッティングが行われていたのではないか・・・

 私はこのページを読んで、上記のような考えに至り、Waltz~のドイツ版CDを入手しました。確かに音が固めです。その後さらにVillageVanguardの録音テープそのものを無編集でCD化した3枚組を聞き、(これはアメリカのFantasy。以前記事にしました)音の鮮度に心打たれ、そちらとドイツ版、おなじみ日本のJVCのK2盤の音源をその時々で好みにあわせて選んで聞いています。(←これ、全部音が違います)

 で、USオリジナル至上主義の思い込みから逃れた私が次に探したのが、表題の'You Must Be In Spring’です。とにかくベースの音が気になって音楽に没頭できないでいました。LPのドイツ盤、2003年以降に曲が追加された直後のWarner-Rhinoのヨーロッパ盤CDを入手し、私の引っ掛かりは解消されました。USオリジナルLPより自然なベース、過剰でないシンバルにまとまっています。ようやく音楽に浸れる。それが率直な感想です。

www.youtube.com

 今日、日本のWarnerのサイトを改めて見てみると、2008年に24bitリマスタリングが施され、SHM-CDとCD、SACDが発売されていますが、残念ながら未聴です。元音源がどのテープかもサイトには記載がありませんでした。

 他力本願ですがご存知の方がいらっしゃれば、教えていただきたいです。。(というか、いつも言いますがレコード会社、どうにかして)

 

追記:2011年のSACD-SHM仕様(WPGR-10008)は、元音源がUSの24bit192khzだそうです。ドイツ盤との音の違いもそうですが、それ以前に、下記↓のようになっていなければ良いのですが。

 

poor-audio.hatenablog.com

PCオーディオ。

一番のポイントは、

「メーカー技術者の音作り」からの開放、だと思います。

 

 CDプレーヤーにせよ、アンプにせよ、もちろんスピーカーもメーカーの開発・設計担当者が音を決めるわけです。

 その意味で、本物の音楽家を経営者に引っ張ってきた盛田さん、井深さん、そしてそれに応えた大賀さん、の組み合わせは大変素晴らしいものだったと思います。

 

 海外のメーカーでは、音楽好きの技術者が開発したスピーカーもあります。たとえば、SonusFaberのミニマ。

 大変魅力的な高域の艶やかさ。クラッシック、特に弦楽器の生音を知っている方からも高い評価を得ているメーカーです。

 設計者はバイオリン弾きで、工場から余った楽器等にも使われる良質の材をかき集めて、ミニマにしたと聞きます。

 

 さて、、、今、日本のメーカーはどうでしょうか。

 

 で、本題。

 PCオーディオの世界が本格化して、特にRaspberryPiが出てから、それを使って簡易なプレーヤーを作ることができるようになりました。

 Windowsの世界ではXPまでカーネルミキサーを経由することで音質が劣化するといわれ、実際にデータが変化してしまうこともわかっています。

【藤本健のDigital Audio Laboratory】第528回:「Windowsオーディオエンジンで音質劣化」を検証 -AV Watch

 Win7でもCPUの使用率が高いと周期ノイズが乗ります。Microsoftのサポートページはこちら。

高い CPU 使用率はフル速度の USB 2. 0 オーディオ デバイスを Windows Vista や Windows Server 2008、Windows Server 2008 R2 Windows 7 を実行しているコンピューター上のルート ハブに接続されている高速なハブに接続している場合

 

 これらの現象を回避するためのオフィシャルがこちら。

オーディオ処理のためのWindows 7最適化 | ナレッジベース | サポート

 

 これらのことから、あまり音楽を聴くPCとしてWindowsが使われてこなかった経緯があります。

 

 それが、ここのところ高音質を目指すならWindowsならJPlay、LinuxならBBBやPiと各種ディストリの組み合わせが大いに賑わっています。Piはコンソーシアムができ、Linuxの知識が無くても使えるようになる日は近いと見ています。

 「好きな音」をメーカーのフィルターを通さず、自由に聞く。ユーザーが音楽を選択できる、とっかえひっかえも、RIAAカーブからほかのカーブへの切り替えも自由自在。音楽ファンにとって、機材の悩みは尽きませんが、そこから自由になり自分の好みの音を聞くことができるのは、PCオーディオというか、デジタルで再生することのメリットということができます。(アナログにはアナログのよさがあり、デジタルを全否定される方もいらっしゃいますが、個人的にはそれとは別に聞く側にとって選択肢が増えた、と考えています)

個人的には最後に「よい」とされたものを漁夫の利として掻っ攫い、もっともコスパの良い状態で環境構築をしたい。。。。

 各開発とトライを繰り返されている皆様に敬意を表して、今年の初めての投稿とさせていただきます。

 私は開発できない一般人ですので、とにかく指を咥えているしかできないのが残念ですが。。Macででてくる24bit96khzの音もまぁ不満のない音だったりするので、駄耳にはこれくらいがちょうどいいのかもしれません。

前回のブログで、購入したユニットの名前を書きませんでしたが、バーンイン中で実力がまだ見えなかったためです。

PEGASUS製 型番 Memoria 口径16cm ビンテージタイプ・フルレンジスピーカー。

興味のある方はヤフオクで検索してみてください。出品者様の対応は非常に丁寧で好感が持てるものです。

まだ1週間ほどですが、最初は硬さがあったものの、やわらかさとベースラインが張り出してくるようになりました。まだ鳴らしこみは足りないかもしれません。

今の所、後面開放の小型箱でニアフィールドで聞くのが最も好みに合います。また、CDよりアナログLPの方が角が取れた音がするような気がします。なかなかの実力といっていいでしょう。ほかの方がUPされた音源ではALTECと直接比較されているようです(これもすばらしい音です)。16センチは直接比較できるユニットが無いので、こちらでは見送ります。

音源はモノラルのアナログLPから取ったものなので、スピーカー1本で鳴らしてみました。TascamのPCMレコーダーで録音していますが、UPの際にMP3に圧縮、YouTube側で再圧縮されているのでそのあたりを差し引いて聞いてください。

表面はサランネットで隠されてしまうため、裏面だけで失礼します。(録音はちゃんと真正面からしてます、念のため)

※5:30過ぎに擦ったような音が入っていますが、私が部屋のビニール袋を触ってしまったためで、スピーカーのせいでも音源のせいでもありません。

www.youtube.com

2017年、年の瀬

 またまた更新まで間延びしてしまいました。ニュースもほとんど見てないうちに、VanGelderの訃報に愕然。以前このブログに、昔の音を取り戻すラストチャンス、のようなことを書いたのですが、その機会はとうとう失われてしまいました。RVGシリーズは当時CDというパッケージメディアのオーディオ環境における回答だったと思いますし、その当時としてはベストを(関係者も含めて)尽くした結果で、そのこと自体に意義があったと思います。しかし、パッケージメディアである以上、CD、MD、カセットテープ、その他多くの失われつつある世界に属するものです。これから残っていくであろう、デジタルデータの世界は、例えばクラウドであり、形を(個人としては)持たない形式になっていくであろうと思っています。

 その世界に、彼の手で遺産が引き継がれなかったことは残念でなりません。

 

 話は変わりますが、アナログレコードを愛好する層が一定数でてきたからでしょうか、ビンテージの再生機器にも価値が出るようになってきました。WesternElectricのケーブルもヤフオクで簡単に手に入ります。ちょっと高騰ぎみですが。

 そうすると、新商品で最初からビンテージ系の音を目指した商品も出てくることになります。私のように50年代60年代の音楽を聴く人にとっては、新しい商品で品質が安定しており、なおかつ昔の音源に合う音作りがされているのは願ったり叶ったり。そんなわけで、ヤフオクでちょっと前から気になっていたユニットを落札してみました。

 今のところバーンイン中。裸でも素性は良さそうに感じられます。しっかり梱包されており、ユニット自体もしっかり作られています。考えてみればオーディオ機器で新品で、メードインジャパン、な物はとても久しぶり。同封された説明書には、後面開放か大型バスレフ推奨、とありました。どちらかで試してみたいと思います。

Roy DuNann、当時を語る(「Direct From Analog Master」って?)

数年前のインタビューですが、歴史的に貴重で面白かったのと、目からウロコだったのと、それまでの様々な疑問が腹落ちした、大変意義深い内容です。

英語ができる方は、ぜひそのまま読んでください。

そして、今のリマスタリングの潮流である「Direct From Analog Master」について、もう一度レコードになるプロセス面から考え直してみたいのです。

www.stereophile.com

 

訳文はこちら。

ジャズ&オーディオ通信(from USA):ロイ・デュナン・トリビュート - livedoor Blog(ブログ)

 

「マスターテープはシンプルかつドライに録音され、リヴァーブはマスタリングすなわちカッティング時に加えられた。ロイはカッティングの際にゲイン等を微妙に調整し、詳細なマスタリング・メモを残した。このメモがなければ、オリジナルのテープを入手しても、ロイの作ったアルバムの音を再現することはできない。(実際、テープに手を加えずにリイシューされた何枚かのCDは酷い音だったらしいが、この事実を知れば当然のことだ。)」

 

要するに、アナログマスターにはリバーブがかかっていない。音は全然違うものになる、ということ。前回のブログで、Steve HoffmanがXRCDのバージョンを音が良いとしていることに触れましたが、初期のRoy DuNannレコーディングについては、田口晃さんとアラン吉田さんはデジタルでこのリバーブを再現しています。このCDが発売されたのが2002年なので、当時は大変なことだったと思います。

時期的に、Roy DuNannのスタジオにあったリバーブ機材は、1957年発売のEMT140あたりでしょうか。当時の機材は鉄板のプレートがあり、片一方に音源を流すと音に残響が乗り、それをプレートの反対側で拾って、音に響きを加える構造。現在は、デジタルプラグインがあり、簡単に再現が可能になっています。

www.youtube.com

 

このインタビューでもう一つ、腹落ちしたのがマイクのこと。

最近のマイクや楽器の音がなぜ昔に比べて魅力的な音にならないのか。ずっと疑問に思っていました。

この時、同席していたのはリマスタリングエンジニアとして高名なバーニー・グランドマンと、レスター・ケーニッヒの息子ジョン・ケーニッヒ。バーニー・グランドマンはコンテンポラリーのマスタリングエンジニアを始め、現在も最前線で活躍する伝説のエンジニア。日本では松任谷由実のベスト盤を手がけているのが最も有名どころでしょうか(あれ、音がアナログっぽいと複数の方から聞きましたが、改めて納得)。レスター・ケーニッヒは当時のコンテンポラリーレコードのプロデューサー。息子さんはクラシックの演奏者だそうです。このジョン・ケーニッヒさんが語るのは、マイクの事情。

「当時のドイツ製のコンデンサー・マイクを上回るマイクは今も存在しない。第2次大戦期~戦後にドイツで開発されたマイク・カプセルを作る技術は冷戦期に失われたときいている。」

 

 今、AKGノイマン、テレフンケンのビンテージマイクは非常に高価なのですが、やはりその機材でないと録れない音があるのですね。終戦後、高度なドイツの技術は東西陣営から奪い合いになり、工場と技術者ごと持って行かれ、東西に引き裂かれるか、東側に全てを持って行かれる運命にあります。有名なところだと光学機器(ツァイスとか)がそうですね。その後東側では技術の劣化コピーしか作られなかったのは歴史が証明しています。この時にマイクの技術のノウハウも無くなってしまったのでしょうか。残念なことです。

残念ながら現時点では当時の技術を再現し、音を再現することは難しい。また、マスターテープからのデジタル化も、訳がわかっているエンジニアが手がけないと、良い結果は得られない。ということです。

元が悪い状態からいくらリマスターをしても、良くなることはありません。デジタル写真もリタッチは可能ですが、撮った時の状態が悪いと撮り直しを余儀なくされます。そのようなものでも平気で出してしまう(そうせざるを得ない?)スタジオ、とそれをそのまま出してしまうレコード会社。それを簡単に判別できる私たちユーザー。

もう、新リマスターだとかダイレクトなんとかには、目を向ける気がおこらなくなりました。これはこれで、様々な広告媒体からのメッセージには目を向けない、取捨選択の自由を得ているということでは、ありがたいことではあります。

デジタルのダウンロード音源、一番の問題は古物として売却できないことです。

CDやLPは気に入らなかったら売却して次に回せます。PCMの音源は最悪でも自分の気に入った編集を加えることが(素人作業ですが)可能ではあります。

最も自由度の低いのがDSDのダウンロード音源です。編集すらできず、最も高価なものを、何の裏付けもなく購入することを余儀なくされている。

レコード会社や音源をダウンロードできるようにしている会社は、そのあたりの責任をしっかりと認識した上で、ライブラリーを充実させて欲しいものです。そのために、リマスタリングスタジオには人材と機材とを充実させる必要があると思うのです。それが聴く人たちの幸せにつながるのですから。