ニセレゾの次は真っ赤な偽DSD!

レコード会社はわれわれとアーティストをつなぎ、音楽の生活をより豊かにする大変重要な役割を担っているのですが、どうもおろそかになっているというか、技術面でも素人に追いついていないというのは問題があるのではないのでしょうか。

 

たとえば、Bill Evansの有名な Explorations。

 

SACDを購入したのですが、何か聞いてて不安感というか、違和感があって、ライナーノーツを見たところこう書かれていました。

 

"Masetering,2004 -  Joe Trantino [Fantasy Studios Bakeley]"

 

2004年ということは、アナログマスターからPCMへデジタルリマスターをしている時期です。DSDの機材は生の録音現場に出始めた程度で、リマスタリングスタジオにはまだ出揃っていません。今でもそうですが、DSDはそもそもアナログマスターのアーカイブ化を目的として開発されたフォーマットで、アナログマスターのアーカイブ以外には生録で使いますが、リマスタリングは用途として考えられていません。したがって、いわゆるリマスターで必要な音の編集機能そのものが規定されていないのです。

 

おそらくですが、この音源はCD用にマスタリングされた2004年バージョンのPCMをDSDにフォーマット変換したものではないでしょうか。

 

一度PCMで録音された音源をDSDに変換すると、可聴帯域外ですが70khzぐらいまで盛大にノイズが乗ります。これはDSDというフォーマットの持つもう一つの特徴です。

したがって、SACDの据え置き型プレーヤーでは40khzぐらいにフィルターを設けて、わざわざそこの帯域をカットした形で再生することが規定されているくらいです。以前、ソニーの初期SDCDでツイーター破損を発生させ、商品回収の原因になったのはオーディオファンなら周知の事実でしょう。

 

さて、冒頭のEvansのSDCDの周波数特性。

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どう考えても、20Khz、大目に見て25khzまでが音楽の領域、そこから上はDSD変換に伴うノイズの帯域です。教科書に載せられそうなぐらいわかりやすい波形です。

 SACDと違ってPCでのファイル再生にはフィルターが入りませんから、耳に聞こえない周波数の信号は音楽と同じぐらいのレベルで流れるわけです。耳には入りません、といいながら、機材とスピーカーにはノイズをばら撒いている。

ハイレゾ」領域はすべてノイズ成分と見ていいでしょう。

これをSACDとして高値で売る、というのはレコード会社としていかがなものでしょうか。私は音楽ファンへの裏切りであり、レコード会社の存在価値を毀損していると思います。(もちろん、そうでないものもありますが、外側からは判断がつきませんし、このような商品の製造と流通を許している時点でどうかと思います)

 

でも国内ではSACDってだけで「自然な音色が楽しめる」とか「滑らかさと存在感が共存」とか、わけのわからない言辞で埋め尽くされるわけです。

おかしいと思っていくつかの海外フォーラムを含めて検索したところ、有名なマスタリングエンジニア、Stive Hoffmanさんのフォーラムに行き着きました。

 

forums.stevehoffman.tv

 

やはり彼もさまざまなExplorationのSACDにダメだしをしており、最善は古い(90年代)のXRCD、Alan YoshidaのK2リマスタリングによるバージョンではないか、との記載をしていました。

知っている人は知っているのでしょうね。これ、海外の一部では高価になっていますが、国内ではハイレゾでもSACDでもないXRCDは今では見向きもされず、未開封品が2000円しないで入手可能でした。

 

結果は、皆さんの耳で確かめていただければと思います。

私は、フォーマットに踊らされて自分の大切なお金と時間を費やす気にはなれません。